2018年~2020年、ベルギー・フランダースではフランドル絵画年。「フランダースの巨匠たち」と題して、ベルギー・フランダースが輩出したフランドル絵画の巨匠たちの作品と現代にまで続くその影響を探るイベントが行われています。
フランドル絵画年のウェブサイト(英語)www.flemishmasters.com/en/
なかでも2019年はピーテル・ブリューゲル(父)の没後450年という記念の年。ベルギー・フランダースを挙げてブリューゲル年を祝います。ブリューゲルは16世紀に現在のオランダ南部で生まれたとされ、その後アントワープとブリュッセルで活躍しました。幻想的な作風で知られるヒエロニムス・ボスの影響を受け、農民の生活を描いた作品や教訓やおかしみをちりばめた作風で知られます。
ベルギー・フランダースで訪れたいブリューゲル関連のスポットとイベント
ブリュッセル
● ベルギー王立美術館(ブリュッセル)
ベルギー王立美術館の古典美術館では「ベツレヘムの戸籍調査」「叛逆天使の墜落」などのブリューゲルの作品を所蔵。まず訪れたいスポットです。
《特別イベント》
ブリューゲル作品の世界をバーチャルに体験できる「目に見えない傑作」展を開催中です。詳細はこちらをご覧ください。

ブリューゲル(父)「ベツレヘムの戸籍調査」ベルギー王立美術館
● ブリュッセルのブリューゲルゆかりの地
ブリューゲルはブリュッセルの下町マロール地区に住んでいたと言われています。ジュ・ド・バルの市の辺りを歩いていたのかもしれません。この地区のノートルダム・ドゥ・ラ・シャペル教会にはブリューゲルが眠っています。
《特別イベント》
2019年9月26日~2019年末
ザ・グレイト・エスケイプ THE GREAT ESCAPE
ブリュッセルのノートルダム・ドゥ・ラ・シャペル教会はピーテル・ブリューゲル(父)が結婚し、埋葬された教会です。没後450年を記念して、ブリューゲルの絵に登場する3Dのキャラクターが、教会に隠れています。どの絵の中の、どんなキャラクターがいるか探してみませんか?

ノートルダム・ドゥ・ラ・シャペル教会
● 2019年10月18日~2020年10月18日 16世紀ブリューゲルの時代を体験
BACK TO BRUEGEL, EXPERIENCE THE 16TH CENTURY
ハルの門(ブリュッセル)
ブリューゲル年を記念して、ブリュッセルのベルギー王立軍事歴史博物館となっているハルの門(Hallepoort)で、VR技術を使って、ブリューゲルの世界が体験できるようになります。ハルの門の上からはブリュッセルの町が一望できますが、没後450年を記念して、ブリューゲルの時代のブリュッセルの風景が体感できるようになります。

ハルの門(ブリュッセル)
● 2019年10月15日~2020年2月16日「白黒のブリューゲルの世界」展
THE WORLD OF BRUEGEL IN BLACK AND WHITE
シャルル・ド・ロレーヌ宮(ブリュッセル)
ブリューゲル年を記念して、通常はベルギー王立図書館に所蔵されているブリューゲルなどの版画を集めた特別展です。ブリューゲルの時代には、版画作品は額に入れて飾られていたのではなく、壁に立てかけたり机に置いたりして、気軽に家族や友人と楽しまれていました。本展では、ベルギー王立図書館所蔵の作品がブリューゲルが生きていた時代のような形で展示されます。会場はベルギー王立美術館近くのシャルル・ド・ロレーヌ宮。18世紀の美しい宮殿の建物もぜひご覧ください。

ブリューゲルの版画展が開催されるシャルル・ド・ロレーヌ宮

シャルル・ド・ロレーヌ宮
● 2019年2月20日~5月26日 「ベルナルド・ヴァン・オルレイ:ブリュッセルとルネサンス」展
BERNARD VAN ORLEY: BRUSSELS AND THE RENAISSANCE
ボザール(ブリュッセル)
当時最大のアトリエを持ち、16世紀初頭のブリュッセルの芸術の基礎を作ったベルナルド・ヴァン・オルレイ (1488-1541)の企画展です。オーストリアのマルガレータやハンガリーのマリーの宮廷に仕え、同時代のデュラーやラファエロとも交流があったとされています。ブリュッセルの文化センターであるBOZARでの開催です。
● 2019年2月27日~6月23日 「ブリューゲル時代の版画」展
PRINT IN THE AGE OF BRUEGEL
ボザール(ブリュッセル)
今では、ブリューゲルの作品の複製はいくらでも作ることができ、多くの人が目にすることができますが、16世紀には、複数印刷して広めることができる手段は、版画だけでした。ブリューゲルは、国外にもその名と作品が知られるよう、作品を印刷していました。本展では、ブリューゲルの時代の南ネーデルランドにおける版画制作を紹介。多方面にわたる、柔軟な方法は、新聞から政治のプロパガンダまで、様々な視覚コミュニケーションに使われました。印刷されたもの全てが、芸術作品とされたわけではありませんが、ブリューゲル時代の版画の繁栄は、芸術的な成功というだけではなく、輝かしい職人技と大胆な企業家精神も主要な役割を果たしたのです。
ブリュッセル郊外
● ブリューゲル街道(ブリュッセル郊外)
ブリューゲルが描いたフランダースの原風景が広がっています。「ヨーロッパ美しい街道20選」のひとつです。詳細はこちらから。
《特別イベント》
2019年4月7日~10月31日「ブリューゲルの目:風景の再構築」展
BRUEGEL’S EYE: RECONSTRUCTING THE LANDSCAPE
ブリューゲル街道にブリューゲルの作品にインスピレーションを受けて作られた15のアートが設置されます。シント・アナ・ペーデの教会とシント・ヘルトルディス・ペーデの水車が起点になります。

ブリューゲル街道:ブリューゲルが描いたシント・アナ・ペーデの教会
2019年4月7日~7月28日「愚の饗宴:ブリューゲル再発見」展
FEAST OF FOOLS: BRUEGEL REDISCOVERED
ガースベーク城(ブリュッセル郊外)
ブリューゲルに魅せられ、影響を受けた20世紀のアーティストの絵画、音楽、文学などの作品を集めた企画展。風刺的なユーモアにあふれ、隠れたメッセージや農村の賛美といったブリューゲルの作品にみられる気風を再発見できることでしょう。ガースベーク城からは、ブリューゲルの描いたフランダースの原風景が広がっており、ブリューゲル街道の一部となっています。

ガースベーク城からの眺め
2019年4月6日~5月5日 フロラリア・ブリュッセルのブリューゲル
グランプラスから約9kmのフロラリア・ブリュッセルはベルギーで人気の花の庭園。春の開園には毎年3万5000人の来場者があります。14ヘクタールの庭園にはチューリップをはじめとする球根の花が咲き乱れ、訪れる人の目を楽しませてくれます。園内には1000平方メートルの温室がありますが、2019年はブリューゲル没後450年を記念して、ブリューゲル作品のレプリカ21点が展示されます。ブリューゲルとフラワーデザインという2つのベルギーフランダースのアートの競演となります。

春の庭園フロラリア・ブリュッセル
アントワープ
● マイヤー・ヴァン・デン・ベルグ美術館(アントワープ)
ブリューゲルの「12の諺」「狂女フリート(ウィーンの企画展に出展後、2019年1月末より展示)」を所蔵。ほか、14~16世紀の彫像、銀器、陶器など、ヴァン・デン・ベルグが蒐集したものが展示されています。

マイヤー・ヴァン・デン・ベルグ美術館の「狂女フリート」と「12の諺」
《特別イベント》
「フーケからブリューゲルへ」展 From Fouquet to Bruegel
2019年10月5日~2020年12月31日
マイヤー・ヴァン・デン・ブルグ美術館
「悪女フリート」の絵がマイヤー・ヴァン・デン・ベルグ美術館のコレクションに加わって2019年10月5日で125年になります。本展では、アントワープ王立美術館の所蔵作品のうち100点以上を蒐集した元アントワープ市長ヴァン・エルトボルンと、マイヤー・ヴァン・デン・ベルグ美術館のコレクションを作り上げたフリッツ・マイヤー・ヴァン・デン・ベルグという二人の19世紀のコレクターに焦点が当てられます。両者とも、ルーベンス以前、すなわち16世紀以前のフランドル絵画や芸術に着目し、この時代の芸術品に高い価値を見出しました。ピーテル・ブリューゲル(父)の「悪女フリート」、15世紀のフランス画家ジャン・フーケの「聖母子」や15世紀のフランドル画家ロヒール・ファン・デル・ウェイデン、ヘラルト・ダヴィトの作品がどのようにコレクションに加えられていったのかに迫ります。本展はアントワープ王立美術館(2022年まで改装のため閉館予定)との協力のもと開催されます。
2019年10月5日~2020年1月26日 ヤン・ブリューゲル(父)の素描画
DRAWINGS OF JAN BRUEGHEL THE ELDER
スナイデルス&ロコックスの家
2019年没後450年を迎えるピーテル・ブリューゲル(父)の次男、ヤン・ブリューゲル(父)の企画展です。ヤン・ブリューゲル(父)は1600年前後に活躍したフランダースの画家。ピーテル・ブリューゲル(父)が基礎を築いた風景画という新しいジャンルを、さらに推し進めたと言われています。この企画展は、イタリア時代の思い出、川と村の景色、道と旅人、森、海、海辺の風景という6つのテーマが時代順に展示され、ヤン・ブリューゲル(父)の主な芸術的興味を探ります。ヤンの風景画は、なぜあれほど生き生きとしたものになったのでしょうか。企画展の最後には、ヤンが描いた有名な動物や果物の素描画とそれに関連する絵画が紹介されます。本展では、ルーブル美術館、大英博物館、アムステルダム国立美術館からの作品を含め、素描画約50点と油彩画数点が展示される予定です。

Collectie Stad Antwerpen, Museum Plantin-Moretus
Breughel, Jan (I) (tekenaar), Een reiswagen op een landweg, PK.OT.00226, Collectie Stad
ベルギー東部
● ボクレイク野外博物館
ベルギー東部にある野外博物館で、100年以上前のベルギーフランダースの農村を再現した場所です。その中にブリューゲルが描いた農村の農家や農民の小道具などが見られる地区があり、ブリューゲルの世界を体験できます。
《特別イベント》
2019年4月6日~10月20日 ブリューゲルの世界 THE WORLD OF BRUEGEL
当時の農民の生活道具と現代の道具を並べた展示、ブリューゲルの絵をモデルにした家屋の展示、ブリューゲルの絵のプロジェクション(絵の中に入ったような体験が可能)など、ブリューゲルをテーマにした様々なイベントが開催されます。
詳細(日本語)→ブリューゲル年に訪れるボクレイク野外博物館

ブリューゲルが描いたような農村の風景が見られるボクレイク野外博物館 (c) Bokrijk

ブリューゲルが描いたような農家が見られる(c)Bokrijk
*上記の日程、情報は2018年5月現在のもので、変更になる可能性があります。
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